かつての阪神大震災の少し前、ラジオで、ある防災センターの所長が「大地震が発生したら決して一生懸命働いてはならない。一生懸命働くと、得体の知れない突然死で死亡する人が出てくる。自衛隊の人を見ろ。何班かに別れて休みながら作業しているではないか」と言っているのを聞いた。大変説得力があったが、災害時に突然死するのは年輩者に多い。
これはロサンゼルス地震の時、心筋梗塞が多発したことを参考にしている。これは1994年1月17朝4時半におこったM6.4の地震で、29人が死亡し、2万人がホームレスになった。ロサンゼルス地区の検死官の統計を調べると、この日に限り心筋梗塞による突然死が、他の日に比べて突出して多くなり、地震が引き金になって発病したとの論文が出た(3)。
その後同じ研究者が、ロサンゼルス地方の広範囲の病院のデーターを調べて、心筋梗塞の発生が一週間に渡り通常より35%増加したとの報告が出た(4)。
これらの論文は、地震が引き金になり心筋梗塞が発生した事を報告した米国での最初の論文だ。この文には冠動脈疾患を有する人には、アスピリンかβ-遮断剤の投与が心臓性急死の予防に有効だとある。
心筋梗塞は冠動脈の単なる狭窄だけではおこらない。狭窄に加え精神的動揺、環境の変化などのストレスによって、血圧上昇物質や血液凝固物質の増加、血管内皮細胞の機能低下をおこし、最終的には不安定プラーグ(動脈硬化性病変)の破裂によって冠動脈の血栓性閉塞を来たし心筋梗塞が発症するとされている。
又、心筋梗塞以外にも大地震の時、重症不整脈による死亡者の増加も記録されており、これらの重要な引き金として精神的ストレスが考えられるとしている。
その後間もなく阪神大地震が発生したが、建物の倒壊による圧死のほかに突然死が多く出るだろうと思った。
阪神大震災は1995年1月17日朝5時46分に起こったM7.2の都市直下型地震で、5500人が死亡し、25万人がホームレスになった大地震だった。死亡原因の9割は家屋の倒壊で、そのほか4万数千人が部屋内の家具の落下で負傷し、多数の人が塵で目を傷めた。
予想どおり、地震発生から心臓性急死や脳卒中で突然死する人が多数あったという。この時淡路島で唯一災害を免れた兵庫県立淡路病院の医師達は、地震発生から4週間までの間に心筋梗塞が通常より3.5倍多く発生し、特に女性、それも70歳前後の女性に多かったとの論文を出した。 精神的ストレスが心筋梗塞の引き金になったのである(5)。新潟県中越地震の避難住民の血圧は10〜20位上がっていたという報道がある。
地震の時は舞い上がる粉塵で目や呼吸器をやられるから、ゴーグルやマスクが必要だ。 冬にはインフルエンザや肺炎が流行する。粉塵に加え、精神的ストレスや睡眠不足、過労、脱水運動不足が病気の原因だろう。
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